スタッフ紹介>>>>>
 「人と建築と環境との共生」を基本理念に掲げ、来年50周年を迎える釜a田設計コンサルタント。代表取締役の和田正樹氏に話しを聞いた。

―設計理念は
 基本理念は「人と建築と環境との共生」。時代のニーズに基づき、“こころの豊かさづくり”に寄与できる新しい設計理念の構築を求め、機能的で環境に調和した建築物の創造を目指している。
具体的には、バランスのよい建築を心掛ける。バランスのよい建築とは、機能的で明快なプランであり、デザインも整理され、コストコントロールもなされ、周りの環境に調和したものだと考える。そのためには、よいスタッフ、よい施工者なしには実現できない。自分ひとりでは決してバランスのよい建築は創れない。完成した建築をクライアントに理解されたときにはじめて、その建築が最もバランスの取れたものになると考えている。

―過去の代表作を見ると、大型物件が多いですね
 これまでは、規模が大きな物件が多かったが、最近はあまり大きくない物件が増えてきた。当社では、以前から医療福祉、文教施設、集合住宅、商業施設など多岐にわたって設計を手がけてきたが、最近の傾向としては保育園が多い。保育園等については、大手設計事務所はあまり手がけないので、地元の設計事務所が手がけているようだ。福岡市内でも年間30件くらいの保育所の建替案件が出ていると聞いている。それと、最近は医療関係の施設も多い。医療施設については、ある程度の規模の病院になると、大手設計事務所が手がけるが、医療施設に附帯する老健施設などは、我々地元の設計事務所が担当していることが多い

―マンションについては
 現在も東京には兄弟会社(事務所設立から約20年は東京事務所としてやっていたが現在は経営は独立している)としての事務所があるが、東京ではマンションの設計もたくさん行っている。福岡ではデベロッパーとの付き合いはあまりなく、マンションは、あまり手がけていない。

―公共建築物について
 公共建築に関しては、過去の実績が必要ということで、指名に参加することが以前と違い難しく、なかなか仕事が取れない。当社では、実績が該当する場合の設計プロポーザルへ積極的に参加している。最近だと、黒木町の地域交流センター(指名型)や公募型プロポーザルの基山町の基山小学校を勝ち取った。オープンコンペやプロポーザルでの勝負では、少しばかり自信がある。ただどうしても事務所の規模(一級建築士の数等)や実績で比較されるので地元の事務所が不利なことは間違いない。ただ、それだからといって最初から諦めないで大手組織事務所に勝る提案をするしかないと考えている。個人的には、設計を入札で行うのはよくないと思う。プロポーザル方式でやってほしい。発注する側は、プロポーザルで設計者を選定する場合、時間と手間がかかり大変だとは思うが、公共の施設なので、特定の学識経験者による審査でなく住民などの意見が反映されるプロポーザルで、是非実施してほしいし、そうなっていかなければならないと思う。

―最近の現状について
亡くなった先代の親父が、頑張って今の事務所の基盤をつくってくれた。これまで、大手設計事務所の下請けなどは、まったくやったことはないし、これからもするつもりはない。これは守って行かなければと思っている。仕事は、自分達で切り開かなければならないものだ。きついところはあるが、事務所のスタッフも全員、そう思っているはず。先代の時代から引き続き、これからも大手設計事務所と渡り合える事務所であり続けたいと願う。大手設計事務所やゼネコンとの接し方についても、通すべき筋は通しながら、うまく関係を保っていこうと考えている。

―リフォーム(改修工事)については、どうですか
 昔は、スクラップアンドビルドで建て替えていたが、今の時代は違う。最近では、新築よりも耐震改修などのリフォームが多くなってきているようだ。リフォームについては、手間暇がかかるので、スタッフは嫌がっているが、物件としては建て替え時期を迎え、これからたくさん出てくるだろう。改修については、設計報酬の基準がないので、これについては国に意見を言っていくつもりだ。リフォームの設計は大変な作業だ。建物が建ったのはだいぶ昔で、図面がないことが多く、図面のCAD化から始めなければならない。新築の設計よりも、手間暇がかかる。それなのに、設計料は改修ということで新築よりも安い場合が多い。

―改修といえば、耐震補強など構造についての問題もありますが
 姉歯の件もあったし、たいへんだった。これから過去のインフラ改修がたくさん出てくる。財政が厳しい時期にたいへんだ。構造については、建築、土木にかかわらず、しっかりとやっていかなければならない。大手設計事務所やゼネコンでは、どうだか知らないが、我々の場合は、構造スタッフが先代の時代からいて、意匠・構造は事務所内部で設計作業を行っている。昔は大手設計事務所の仕事をゼネコンが手伝っていた時期もあったという話しを聞いたことがある。

―若い世代の設計者について
 昔は手書きで図面をおこしていたが、今はCADを使う。若い者はCADで図面を書いているので、総じて図面をかけない。そのCADで書いたデータが、そのまま現場に流れるので、間違っていた場合、そのまま間違いが現場へと流れていくことがある。それがこわい。それと、現場を総括する人間が、現場での流れをわかっていないことが多い。専門工事業者を管理する術も知らないし、監理する人間のレベルが落ちてきているのではないか。よほど工務店の現場代理人が分かっている。昔は図面については、手書きだったので、間違いがあれば、一から図面を引き直さなければならなかった。今にして思えば、たいへん勉強になった。今はCADを使用しているので、間違いや修正箇所を切り貼りして、簡単に訂正できる。合理化されて、一人一人の能力が落ちてきているのではないか。それと、昔に比べて、今は休日が多すぎるような気がする。若い世代には、世の中のためになるように、社会に役立つ人間になってもらいたい。

―スタッフについては
 今の時代はCADだから、仕事を中国に外注している事務所もあるようだ。これでは、人を育てる以前に、設計する人間が事務所に残るかどうか。会社として、人を育てていくのはたいへんだろうし、それに、会社として生き残っていくのも難しくなっていくのではないか。今は、昔に比べると、なんやかんや言っても豊かだ。これから日本の将来はどうなるのか心配だ。シンガポール人などは優秀で、東南アジア地域は、ますます発展していくだろう。これから、会社としても人としても、国際的にならないと生きていけないだろう。

―今後の展望について
 当社は、来年で50周年を迎える。これを機に、和田設計コンサルタントという社名から、コンサルタントを外し、和田設計にしようかなとも考えている。時代は変わる。大きな会社でも世の中の流れに、そぐわない会社は淘汰され、消滅していくだろう。当社でも50年を契機として、何か変わっていかなければならないだろう。今のところ、これといった展望はないが、これからじっくり考えていこうと思う。大手設計事務所には、今はもう設立者はいない。うちもどうなることか。ここ数年のうちに、将来への方向性が自然と出てくるのではないか。

釜a田設計コンサルタント代表取締役 和田正樹氏の略歴
    1973年 3月 東京理科大学工学部建築学科 卒業
    1973年 4月 (株)建築生産研究所に勤務
    1977年 4月 (株)和田設計コンサルタント 入社
    1997年 4月 同社代表取締役就任、現在にいたる

釜a田設計コンサルタントの技術者数は、一級建築士12名、建築積算資格者2名、甲種消防設備士1名。
作品割合は医療福祉30%、文教施設21%、集合住宅20%、商業施設13%、その他。